今回のコラムでは、顧客へのアプローチ方法について考えてみましょう。B to B企業向けの営業活動において、どのような顧客アプローチがあるかを整理しておくことは非常に重要です。これは、やみくもに電話をかけ始める前に必ず行うべきステップです。
アプローチ方法を検討する人の役職や権限も明確にしておく必要があります。例えば、経営層は、最も効果的でレバレッジの効く戦略を検討すべきです。また、マーケティング部門や営業部門の責任者は、使用できる予算や予算獲得のスケジュールを考慮して、早めに行動を開始する必要があります。基本的に、レバレッジの効く戦略は中長期的な視点で実施されるため、短期的な成果と中長期的な成果のバランスを考えながら進めることが求められます。
よくあるケースとして、マーケティング部門が中長期的な戦略を進めたいのに対し、営業部門が短期的な成果を求めるために、両者の協力が難しくなることがあります。このような状況では、全社的な調整や経営層による優先順位の明確化が重要です。
では、オフラインとオンラインのアプローチ手段について、それぞれのメリットとデメリットを整理してみましょう。実施する手段がどのくらいのターゲットに届くのか、どのフェーズに最適か、成果を得るまでにかかるリードタイムや費用、社内リソースを整理した上で進めることが鍵となります。
B to Bマーケティング施策の打ち手一覧
- 1. オフラインでのアプローチ手段
- 1.1. 電話
- 1.2. 展示会
- 1.3. 接待
- 1.4. DM/手紙
- 1.5. TVCM
- 1.6. OOH等の広告看板
- 1.7. 紹介
- 1.8. セミナー・ワークショップ
- 1.9. ネットワーキングイベント
- 2. オンラインでのアプローチ手段
- 2.1. メール
- 2.2. WEB会議
- 2.3. ウェビナー
- 2.4. HP(ホームページ)
- 2.5. ホワイトペーパー
- 2.6. SNS(ソーシャルメディア)
- 2.7. 検索(SEO)
- 2.8. デジタル広告(リスティング広告、ディスプレイ広告)
- 2.9. 動画コンテンツ(YouTubeやVimeoなど)
- 2.10. ポッドキャスト
- 3. 終わりに
オフラインでのアプローチ手段
電話
メリット:営業部門において、ターゲット顧客に直接アプローチでき、即座に反応を得られる。
声でのコミュニケーションにより、細かいニュアンスを伝えやすい。
フォローアップや問い合わせ対応に有効。
デメリット:忙しい顧客にとって迷惑になることがあり、電話を取られない可能性が高い。
大量の顧客に対して効率的ではないため、営業コストが高くなる。
リードタイム: 短い(即時反応が期待できるが、商談成立までには時間がかかることがある)。
活用フェーズ: フォローアップ、商談前のコンタクト。
予算: 比較的低コスト(人件費がメイン)。
展示会
メリット:マーケティング部門がリードジェネレーションを行い、営業部門が商談を進める場を提供。
直接商品を見せ、顧客とリアルな会話ができるため、信頼関係を築きやすい。
一度に多くのリードを獲得可能。
デメリット:出展費やブース設営、人員派遣などコストが高い。
来場者の質がまちまちで、ターゲット顧客に確実にリーチできるとは限らない。
リードタイム: 中期(イベント後のフォローアップが必要)。
活用フェーズ: 認知拡大、リードジェネレーション。
予算: 高コスト(出展料、設営費、人件費)。
接待
メリット:営業部門が既存顧客や重要な見込み客との信頼関係を深めるのに有効。
対面での関係構築により、競合に勝ちやすくなる。
デメリット:高額な費用がかかり、ROIを把握しにくい。
短期間で成果が出るわけではなく、長期的な取り組みが必要。
リードタイム: 長期(信頼関係の構築に時間がかかる)。
活用フェーズ: 商談フェーズ、契約交渉前。
予算: 高コスト(接待費、人件費)。
DM/手紙
メリット:マーケティング部門が特定のターゲットリストに対してアプローチ可能。
物理的な存在感があり、目に留まりやすい。
競合がデジタルに集中している中、差別化要素になり得る。
デメリット:開封されないリスクが高い。
大量配布にはコストがかかる。
効果測定が難しく、ROIが不明瞭になりやすい。
リードタイム: 中期(受け取ってからの反応には時間がかかる)。
活用フェーズ: リードナーチャリング、フォローアップ。
予算: 中コスト(印刷費、郵送費、人件費)。
TVCM
メリット:マーケティング部門が幅広い認知拡大を狙える。
多くの人に一度にアプローチでき、ブランドイメージの強化が可能。
デメリット:高額な広告費がかかる。
具体的なリード獲得には不向き。
効果測定が難しく、商談や売上に直接結びつけるのが困難。
リードタイム: 長期(ブランド認知には時間がかかる)。
活用フェーズ: 認知拡大。
予算: 非常に高コスト(広告制作費、放映費)。
OOH等の広告看板
メリット:マーケティング部門が特定の地域やターゲットに対してブランドの認知拡大を図れる。
視覚的に強い印象を残せる。
デメリット:効果測定が困難。
広範囲のターゲットに対しては効率が悪い。
物理的な設置場所によってはターゲットにリーチできない可能性がある。
リードタイム: 長期(認知拡大に時間がかかる)。
活用フェーズ: 認知拡大。
予算: 高コスト(設置費、制作費)。
紹介
メリット:営業部門が最も信頼性の高いリードを獲得でき、成功率が高い。
紹介元との信頼関係があるため、商談が進みやすい。
デメリット:紹介に頼るだけでは規模拡大が難しい。
依存度が高くなる可能性。
リードタイム: 短期(商談に繋がりやすい)。
活用フェーズ: 商談フェーズ。
予算: なし。
セミナー・ワークショップ
メリット:マーケティング部門が顧客を集めて自社製品やサービスを教育・啓蒙する場を提供。
営業部門はイベント終了後に商談の機会を得やすい。
リードの質が高く、対面での深いコミュニケーションが取れるため、信頼関係を構築しやすい。
デメリット:イベントの準備や開催にはコストと時間がかかる。
集客が難しい場合もある。
リードタイム: 中期(イベント後のフォローアップが必要)。
活用フェーズ: 認知拡大、リードジェネレーション、商談。
予算: 中コスト(会場費、人件費、プロモーション費用)。
ネットワーキングイベント
メリット:営業部門が業界イベントやビジネス交流会で直接的に人脈を築く場として活用可能。
信頼できるパートナーや見込み顧客と直接対話できるため、関係構築が容易。
デメリット:イベントへの参加費や移動費がかかる。
即時の成果は期待しにくく、継続的なフォローが必要。
リードタイム: 長期(関係構築に時間がかかる場合がある)。
活用フェーズ: リードジェネレーション、商談。
予算: 中コスト(参加費、移動費)。
オンラインでのアプローチ手段
メール
メリット:マーケティング部門と営業部門の両方で利用でき、ターゲットにパーソナライズされたメッセージを送信可能。
低コストで大量の顧客にアプローチできる。
メール開封率、クリック率などの効果測定が容易。
デメリット:スパムとして認識されるリスクが高く、開封されないことも多い。
個別対応には時間がかかるため、フォローアップには営業のリソースが必要。
リードタイム: 短期〜中期(即時反応もあるが、フォローアップが必要な場合が多い)。
活用フェーズ: リードジェネレーション、ナーチャリング。
予算: 低コスト(メール配信ツール費用)。
WEB会議
メリット:営業部門が商談の効率化を図れる。
対面に近いコミュニケーションが可能で、商談を進めやすい。
デメリット:顧客側の準備が必要なため、参加率が低くなる場合もある。
対面よりも信頼関係を築くのに時間がかかることがある。
リードタイム: 中期(フォローアップが必要)。
活用フェーズ: 商談フェーズ。
予算: 低コスト(オンラインツール費用)。
ウェビナー
メリット:マーケティング部門がターゲット顧客に向けて情報提供や教育を行い、リードを獲得できる。
録画を残すことで長期的にリードジェネレーション可能。
デメリット:参加者を集めるのが難しいことがあり、集客のためのマーケティングコストが発生。
リードタイム: 中期(イベント後のフォローアップが必要)。
活用フェーズ: リードジェネレーション、ナーチャリング。
予算: 中コスト(ツール費、プロモーション費)。
HP(ホームページ)
メリット:マーケティング部門が24時間体制で認知拡大やリードジェネレーションを行うプラットフォームとして機能。
製品やサービスに関する情報を網羅的に掲載でき、SEO対策を行えばオーガニック流入を期待できる。
営業部門にとっても、問い合わせフォームやホワイトペーパーのダウンロード、ケーススタディの閲覧を通じてリードを獲得する場として活用できる。
デメリット:効果的なサイトを構築するためには初期投資が必要。
メンテナンスやコンテンツ更新も継続的に行わないと効果が低下する。
競争が激しいため、SEO対策やデジタルマーケティングにコストがかかる場合がある。
リードタイム: 中期~長期(SEO効果が出るまで時間がかかるが、長期的な成果が期待できる)。
活用フェーズ: リードジェネレーション、認知拡大、ナーチャリング。
予算: 中~高コスト(ウェブ開発、コンテンツ作成、SEO対策)。
ホワイトペーパー
メリット:マーケティング部門がB2Bリードを育成するために活用。
業界に関連する専門知識を提供することで、信頼性や専門性を高められる。
見込み顧客にリード情報を得るためのフォーム記入を促すことができる。
営業部門にとっては、商談前に送付することで、見込み顧客の理解度を高め、商談をスムーズに進める手助けとなる。
デメリット:作成に時間とコストがかかる。
内容が専門的すぎると、一般のリードには受け入れにくい場合がある。
継続的なダウンロードを促すには、プロモーションやフォローアップが必要。
リードタイム: 中期(ダウンロード後、フォローアップが必要)。
活用フェーズ: リードジェネレーション、ナーチャリング。
予算: 中コスト(コンテンツ作成、プロモーション費用)。
SNS(ソーシャルメディア)
メリット:マーケティング部門がブランドの認知度を高め、エンゲージメントを通じてリード獲得に繋げられる。コンテンツのシェアによってバイラル効果を得られることがある。
営業部門もLinkedInなどを活用して、個別に顧客とのつながりを強化できる。
デメリット:効果を出すためには、定期的なコンテンツ投稿やユーザーとの対話が求められるため、リソースが必要。即効性は低く、長期的な取り組みが必要。
フォロワーの質やエンゲージメント率が高くないと、見込み顧客に直接アプローチできない。
リードタイム: 中期~長期(フォロワーの育成が必要)。
活用フェーズ: 認知拡大、リードジェネレーション、ナーチャリング。
予算: 低~中コスト(広告費、SNS管理ツール)。
検索(SEO)
メリット:マーケティング部門がSEOを駆使することで、ターゲット顧客が自ら情報を探してウェブサイトに訪れる。オーガニック検索流入は長期的なリードジェネレーションに強力な効果を発揮する。
営業部門もSEOで訪問したリードに基づいて、アプローチを行える。
デメリット:効果が出るまでに時間がかかり、競争が激しい分野では特に難しい。
SEO対策に継続的な時間と費用がかかる。
リードタイム: 長期(SEO対策の結果が出るまでに時間がかかる)。
活用フェーズ: 認知拡大、リードジェネレーション。
予算: 中コスト(SEOツール、コンテンツ作成費用)。
デジタル広告(リスティング広告、ディスプレイ広告)
メリット:マーケティング部門がターゲットを絞って広告を配信することで、即効性のあるリードジェネレーションが可能。特定のターゲット層に対してパーソナライズされたメッセージを提供できる。
営業部門にとっても、広告経由で得たリードに即座にアプローチする機会が得られる。
デメリット:広告費用が高くなることがあり、予算が限られている場合はコストパフォーマンスを常に確認する必要がある。広告をクリックしても、すぐに商談に繋がるとは限らず、後続のナーチャリングが必要。
リードタイム: 短期~中期(即時反応が期待できるが、フォローアップが必要)。
活用フェーズ: リードジェネレーション、リターゲティング。
予算: 中~高コスト(広告費、クリエイティブ制作費
動画コンテンツ(YouTubeやVimeoなど)
メリット:マーケティング部門が視覚的で強いインパクトを与え、製品やサービスの理解を深める。
SEO効果も期待できる。営業部門も、商談前に製品デモや紹介動画を送ることで、顧客により詳細な情報を提供できる。
デメリット:動画制作には手間とコストがかかる。
効果が出るまで時間がかかる。
リードタイム: 中期~長期(コンテンツの拡散には時間がかかる)。
活用フェーズ: 認知拡大、リードジェネレーション。
予算: 中~高コスト(制作費、プロモーション費)。
ポッドキャスト
メリット:マーケティング部門が業界のトレンドや専門的な知識を発信することで、長期的に信頼を築き、顧客とのエンゲージメントを高める。営業部門がポッドキャストを顧客に紹介することで、商談の前に自社の理解を深めてもらえる。
デメリット:制作には時間がかかり、リスナーを獲得するまでに時間が必要。
リードタイム: 長期(リスナーが増えるまで時間がかかる)。
活用フェーズ: 認知拡大、リード育成。
予算: 中コスト(制作費、配信費用)。
終わりに
最近では、B to B企業でもコンテンツ制作に力を入れている企業が増えており、ホワイトペーパーやブログ記事、YouTubeチャンネルの運用など、成果が出るまでに時間がかかる手段にも注力する傾向が見られます。また、ポッドキャストが普及し、作業中や移動中に流し聞きする文化も徐々に浸透してきています。
今後、様々なテクノロジーや手段が増える中で、それぞれの手段がどの程度の人数にアプローチできるのか、どのような成果が期待できるのか、リードタイム、予算、社内リソースの必要量を総合的に検討してから実施する策を決定することが重要です。場合によっては、オフラインの手段や営業活動に工数をかけず、デジタルマーケティングに予算を投下するという選択肢が増えてくるかもしれません。
自社の組織状態に合わせながら、優先順位をつけて、手段を検討していきましょう!