オリエンテーションが終わり、次はいよいよ提案フェーズです。法人向けの商材であれば、提案書やお見積書の準備が欠かせません。しかし、提案書作成について「自信がない」「どう進めるべきかわからない」という声も多く聞かれます。
提案書を作成する際、まず重要なのは、いきなりPPTを作り始めるのではなく、目次を用意し、どのようなストーリー展開であれば顧客にとって分かりやすいかを考えながら進めることです。
特にB2B向けの法人営業の場面では、複数の提案書を比較する意思決定者にとって、結論を最初に示す「結論先行型アプローチ」が効果的です。提案の目的やメリットを冒頭で提示することで、相手にとっての利点が直感的に伝わり、内容の理解も深まります。
結論を後回しにする日本的な「起承転結」スタイルでは、複数の提案を短時間で検討する際に顧客の負担が増えるため、ビジネスの現場では結論を先に述べるスタイルが求められています。
では、この結論先行型のアプローチに基づき、どのようなストーリー構成をとるべきか、事例を交えながら見ていきましょう。
結論先行型(Top-Down)アプローチ
ストーリー構成例
① 結論(Conclusion)
最初に提案の要点を明確に述べます。「この提案がどう役立つか」「どのような効果が得られるか」を一言で伝えます。これにより、相手は最初から提案の目的を理解し、集中して読み進めることができます。
② 現状分析(Current Situation)
結論を述べた後、提案の背景となる現状や課題を整理します。ここでは、現在の状況や問題点を具体的なデータや事実を基に示します。
③ 提案内容(Proposed Solution)
次に、提案する解決策を詳しく説明します。問題に対する解決策や、提案の効果的なポイントを段階的に示します。このセクションでは、具体的な戦略、サービス、製品などを提示します。
④ 根拠と実績(Evidence and Benefits)
提案が成功する根拠として、過去の実績や事例、データを示します。特に、他のクライアントで成功した事例や提供する価値を強調します。ここで、提案によって期待される具体的なメリットや、顧客に対してどのような結果をもたらすかを述べます。
⑤ 予算とスケジュール(Cost and Timeline)
予算の見積もりやスケジュール感を具体的に提示します。意思決定者は、どれくらいの期間で実行可能か、どのくらいのコストがかかるかを早期に知りたいことが多いため、これを明確に示します。
⑥ リスクと対策(Risks and Mitigations)
プロジェクトの進行にあたり、想定されるリスクや、それに対する対策を述べます。特にBtoB提案では、顧客がリスクに対して敏感であるため、これを安心させる情報として提供します。
⑦ 次のステップ(Next Steps)
提案を受け入れた場合に、次に何をすべきかを明確に示します。これは、契約に向けたプロセスや初期の準備事項、必要なアクションなどを含みます。
この結論先行型のアプローチを採用することで、提案書全体が論理的かつ簡潔に構成され、顧客にとっても理解しやすい内容となります。提案の要点を最初に示すことで、意思決定者が提案のメリットを即座に把握し、続く情報をより深く検討する土台を築くことができます。結論を冒頭で示すことで、読み手に対する配慮と分かりやすさを提供し、信頼感のある提案書を作成できる点が、このアプローチの大きな利点です。
日本的アプローチと比較
日本では、「起承転結」というストーリーテリングのスタイルがよく使われますが、ビジネスシーンでは結論を後回しにすることで、顧客が長く集中して提案内容を待たなければならず、意思決定者にとっては不便になることがあります。
そのため、日本のビジネス環境においても、結論を先に述べるスタイルの方が理解しやすいという考え方が浸透しつつあります。
海外の事例
Googleの提案書事例
Googleでは、結論を最初に述べ、その後データや分析結果、予算、スケジュールといった要素をサポート情報として続ける形式が多く見られます。
デジタルマーケティングの分野では、成果を最初に提示し、その根拠としてさまざまなデータやツールの活用法を説明することが一般的です。
IBMのコンサルティング事例
IBMのコンサルティング提案書では、最初に「クライアントの課題→提案のソリューション→実績・根拠→予算・スケジュール→次のステップ」という流れを徹底しています。
特に大規模なプロジェクトでは、明確なスケジュールと予算が最優先されています。
実例:商材がB to Bマーケティングの場合の記載内容
では、提案商材がB to Bマーケティングの支援サービスの場合の提案書の構成を見ていきます。
① 提案の要約(Executive Summary)
提案書の冒頭に、以下のポイントを簡潔に記載します。
提案の目的:この提案が解決しようとしているマーケティングの課題(例:リード獲得の効率化、デジタルチャネルの強化など)
提案の要点:具体的な支援内容や解決策(例:リードジェネレーション支援、SEO施策、コンテンツマーケティング戦略の提供など)
期待される成果:提案を実施することで顧客にどのようなビジネス効果が見込まれるか(例:リード増加、CVR改善、商談数の増加など)
② 現状と課題の整理(Current Situation and Challenges)
顧客が現在直面しているマーケティング上の課題や市場環境を整理します。
現在の課題:リード不足、オンラインプレゼンスの低さ、ターゲット顧客へのアプローチが不十分などの具体的な問題点。
市場動向や競合の動き:顧客の業界での競合他社がどのようにマーケティング戦略を進めているか、顧客がどのような機会を逃しているか。
③ 提案する解決策(Proposed Solution)
解決策の概要:マーケティング支援の全体像(例:コンテンツマーケティング、デジタル広告の運用、SEO対策、MAツールの導入支援など)
具体的なアクション:施策ごとの具体的な内容(例:SEO施策でターゲットキーワードを選定し、検索エンジンでの上位表示を目指す)
解決策の優位性:自社が提供する支援サービスが他社とどう異なるか、どのような付加価値を提供できるか(例:自社の過去の実績、専門性、迅速な対応力など)
④ 予算とスケジュール(Budget and Timeline)
提案を実施する際の費用やスケジュールを提示します。
予算:サービスの導入費用、運用コスト、広告費などの総額と内訳を提示。
スケジュール:施策開始から成果が見込まれるまでのマイルストーンや、各施策の実施スケジュール。
⑤ リスクとその対策(Risks and Mitigations)
予想されるリスク:施策が期待通りの結果を生まないリスク、デジタル広告運用
リスク軽減策:リスクが顕在化しないように、定期的なデータモニタリングやキャンペーンの最適化を行う対策を示します。リスクへの対策が具体的に示されていれば、顧客も安心してプロジェクトに取り組むことができます。
⑥ 成功事例と実績(Case Studies and Evidence)
自社が提供したB2Bマーケティング支援での成功事例や過去の実績を紹介します。
成功事例:似たような企業で実施したマーケティング支援が成功した例(例:SEO強化によるサイト訪問者数の増加や、コンテンツマーケティングによるリード獲得数の大幅な向上)
実績データ:具体的な数値データを提示し、提案内容の効果を裏付ける(例:CPAの低減や成約率の向上)。実績データが提案の信頼性を補強します。
⑦ プロジェクト進行の管理方法(Project Management)
プロジェクトの管理方法を説明し、適切に進行できる体制を示します。
プロジェクトチームの構成:自社のプロジェクトチーム(マーケティングコンサルタント、デジタル広告担当など)の役割と責任を記載します。
進行管理方法:定期的なレポートやミーティング、KPIのレビューなどを通じて進行状況を管理する方法を提示。顧客に対してプロジェクトが適切に進行するという信頼感を提供します。
⑧ 提案後の価値と期待される成果(Expected Outcomes and Benefits)
マーケティング支援が成功した際に得られる具体的な成果を明確に説明します。
顧客への利益:提案を採用することで、具体的な成果(リード数の増加、成約率向上、営業活動の効率化など)を明確化する。
定量的な効果:具体的な数値目標やROI(例:広告予算に対するコンバージョン率、顧客獲得単価の改善)を提示します。
まとめ
この結論先行型の提案書スタイルは、提案内容とその効果を最初に伝えることで、顧客に「これなら効果が期待できそうだ」と興味を持ってもらいやすくなります。
プロジェクトをスムーズに進行させるための管理方法やリスク対策も含め、顧客が安心して採用できる提案書を目指しましょう。結果として、顧客との信頼関係も強まり、次のステップへとつながる一歩となります。