施策を実施する上での優先順位と考え方
B2Bマーケティング施策を効果的に進めるためには、受注に直結する部分から優先して着手し、基盤を整備することが不可欠です。まずは商談フェーズで必要な要素を見直し、しっかり整えることが重要です。
受注率を高めるために実施すること
商談フェーズでは、提案資料を使用して営業が顧客へ説明を行います。ここで大切なのは、サービス内容や価格の構成、導入に関する計画が明確に盛り込まれていることです。
特に、提案資料は競合他社と比較されることが多いため、自社サービスの強みや提案内容を明確に記載しなければなりません。また、信頼を獲得できるかどうか、プロジェクトが順調に進行し完了するかどうかを示すことも欠かせません。
そのため、過去の実績、プロジェクトの進行体制、懸念事項とその対応策を資料に含めることが推奨されます。信頼性の高い資料は、顧客に安心感を提供し、発注の決定要因となる可能性があります。
導入事例や過去の実績を整理し、提案時に活用できるように準備しておくことも重要です。受注率は一般的に20%~30%程度であることが多いですが、まずはこの範囲内での改善を目指しましょう。
商談率を高めるために実施すること
次に、資料請求から商談に進むフェーズで商談率を高めることを目指します。顧客は資料請求後、情報を収集し、サービスの強みや過去の実績、関連する導入事例を調査します。
この段階で顧客が求める情報を即座に提供できるよう、導入事例、過去の実績、料金やサービス内容の比較資料を整備しておくことが求められます。
顧客が予算を獲得し、業者選定フェーズに移行した際には、検索サイトや比較サイトで情報を得るのが一般的です。候補として認識されるために、自社情報が簡単に見つかるようにしておき、確実な存在感を示しましょう。
コンバージョンから業者選定までの期間にタイムラグが生じるため、その間にメルマガなどで顧客に役立つ情報を提供し、関係を維持することが効果的です。
コンバージョン率を改善する最優先事項
具体的なコンバージョン率改善施策としては、Webサイト内におけるCTA(コール・トゥ・アクション)の設置が挙げられます。CTAが設置されていない、または改善の余地がある場合は、早急に見直してコンバージョンレート2%以上を目指してサイトを改良しましょう。
最後に集客施策
コンバージョンレートの改善が実現できた後、集客施策に移行します。即効性の高い施策としては、検索広告が有効です。Google広告やFacebook広告などを活用し、ターゲット層にリーチしましょう。
展示会などのオフライン施策も、名刺の獲得などを目的として実施し、コンバージョン率や受注件数のデータを取得して効果を評価します。どの施策が投資対効果を持つのか整理し、優先順位をつけて実施していきましょう。
具体的な実施施策
商談フェーズ施策
① 提案資料の見直し
概略:提案資料の見直し作業では、顧客の課題や要求を明確に整理し、それに基づくソリューションを提示します。資料には、サービスの特徴や強み、導入プロセス、価格設定、プロジェクト体制、過去の実績、事例紹介、懸念事項とその対策を網羅します。
効果:説得力のある提案ができ、顧客からの信頼を得て受注率が向上します。
予算:小
社内工数:中~高
② 過去実績、導入事例集、比較表の整備
概略:過去のプロジェクトや成功事例を整理し、見込み顧客に提示する事例集を作成します。サービス内容や金額を比較できる表を用意し、競合との差異を明確に伝えます。
作業内容:情報収集、資料作成、レイアウトの調整。
効果:顧客の導入検討に役立ち、商談化率を高めます。
予算:小
社内工数:中
CV施策
③ Webサイト改善(CTAの設置、CVレートの改善)
概略:Webサイト内のCTAボタンをユーザーフレンドリーなデザインで設置し、CVポイントを明確にします。訪問者がアクションを起こしやすくなる配置やデザインの工夫が必要です。
効果:コンバージョン率を向上させ、リード獲得を促進します。
予算:小
社内工数:中
④ ホワイトペーパーの作成
概略:顧客が抱える特定の課題に対する解決策をまとめたホワイトペーパーを作成し、リードジェネレーションに利用します。
作業内容:調査、執筆、デザイン作成、ダウンロードページの構築。
効果:リード獲得を促進し、企業の信頼性を向上させます。
予算:中
社内工数:高
⑤ ウェビナーの開催
概略:自社製品や業界知識に関するウェビナーを開催し、ターゲット層と直接対話できる場を設けます。
作業内容:内容企画、スライド作成、集客活動、司会進行。
効果:見込み顧客をリードに育成し、商談機会を生み出します。
予算:中
社内工数:高
⑥ メルマガの発行
概略:定期的なメルマガ配信を通じて、見込み顧客に有益な情報を提供し、関心を引き続けます。
作業内容:コンテンツの企画、執筆、メールリストの管理と配信。
効果:顧客とのエンゲージメントを維持し、商談機会の増加を促します。
予算:小
社内工数:低~中
集客施策
⑦ SEO
概略:キーワード戦略や技術的なSEO施策を通じ、サイトのオーガニックトラフィックを増加させます。
作業内容:キーワード調査、コンテンツ作成、内部リンクの設定、技術改善。
効果:長期的なトラフィック増加とリード獲得が期待できます。
予算:中
社内工数:高
⑧ 検索広告
概略:Google広告などを使用してターゲットユーザーにリーチし、広告を検索結果ページに表示させます。
作業内容:キーワード選定、広告コピー作成、キャンペーン設定、効果測定。
効果:即効性のあるリード獲得とブランド認知度向上。
予算:中
社内工数:中
⑨ Facebook広告
概略:Facebook広告を活用し、精緻なターゲティングで潜在顧客にアプローチします。
作業内容:広告デザイン、ターゲット設定、キャンペーンの管理。
効果:新規リード獲得とリターゲティングによる育成。
予算:中
社内工数:中
⑩ 展示会
概略:業界の展示会に出展し、新たな顧客との接点を作ります。名刺交換を通じてリードを取得し、フォローアップを行います。
作業内容:ブース設営、資料作成、スタッフ準備、現場対応。
効果:対面での交流により信頼関係を築き、商談の機会を創出します。
予算:大
社内工数:高
⑪ テレアポ
概略:見込み顧客に電話でコンタクトを取り、商談に進む機会を創出します。
作業内容:顧客リスト作成、スクリプト準備、電話対応、フォローアップ。
効果:迅速に商談に引き込むことができます。
予算:小
社内工数:中~高
⑫ マス広告
概略:テレビやラジオ広告で広範囲にブランドを認知させ、企業や担当者に良い印象を与えます。
作業内容:広告企画、制作、メディア選定、スケジュール管理。
効果:ブランド力強化と広域の認知度向上。
予算:大
社内工数:高
⑬ OOH広告(屋外広告)
概略:屋外広告でエリア限定のブランド認知を高めます。
作業内容:広告デザイン、設置場所選定、設置作業。
効果:視覚的なインパクトで広範囲にリーチが可能です。
予算:中~大
社内工数:中
⑭ 広報活動
概略:プレスリリースやメディア掲載を通じて、新製品や企業情報を広め、ブランドの信頼性を強化します。
作業内容:プレスリリース作成、メディア対応、掲載の確認。
効果:ブランド認知向上と新たな顧客層の開拓。
予算:中
社内工数:中
要注意施策の再評価
また、B2Bマーケティング施策の中には、見直しが必要な要素も存在します。
以下の施策が自社にとって本当に効果的かどうか再度評価してみましょう。
① 認知目的の広告
TVCM、タクシー広告、YouTubeバンパー広告などは広範囲に認知度を高める施策ですが、B2Bビジネスではターゲットが限定されるため、必ずしも見込み顧客獲得に直結しないことがあります。リスティング広告やリターゲティング施策と組み合わせることで、コンバージョン率を高める工夫が求められます。
② 過剰なウェブサイトデザイン
ウェブサイトは顧客が情報を理解するための重要なタッチポイントです。過度に凝ったデザインにコストをかけるよりも、資料請求や問い合わせといった具体的なコンバージョンを意識した設計が重要です。
③ 曖昧なブランディング動画
ブランディング目的で制作される動画も、ターゲットの行動を促さない場合は効果が薄いです。自社のサービスがどのように価値を提供するかを明示する動画の方が、行動喚起に効果的です。
④ 複雑なMA(マーケティングオートメーション)シナリオ
複雑すぎるMAシナリオは、運用コストが増大し、目的を見失いがちです。営業部門と連携を取るためにもシンプルな設計が求められます。
まとめ
B2Bマーケティングの成功には、受注率改善から集客施策まで、戦略的な優先順位を持って取り組むことが求められます。各施策が自社にとって本当に効果的かどうかを見極め、時間とコストを最適に配分することで、最大の成果が期待できます。これらの施策を通じて、組織全体で持続的な成長を目指し、安定した収益基盤を築いていきましょう。最終的には、効率的なマーケティング活動が、企業の未来を切り拓く鍵となります。