営業戦略の立案における5W1Hの重要性
弊社では法人営業の支援事業を行っていますが、自社の営業戦略を考える際や、お客様の事業を理解する際に、5W1Hを活用して整理しています。この5W1Hはすべて有機的につながっており、それぞれを別個に考えるのではなく、鎖のように連携させて考えることで、商品やサービスの魅力が届けたい相手に正確に伝わります。
これは経営者はもちろん、現場で活動する営業担当者やマーケティング担当者にもぜひ考えていただきたいポイントです。
プロダクトだけでなく、5W1Hまで含めて「サービス」だということを理解して整理してみましょう。
Why(なぜこの事業を行うのか)
営業戦略の最初のステップは「Why」、つまりなぜこの事業を行うのかを明確にすることです。これは経営者だけの仕事ではなく、営業担当者も深く考え、理解する必要があります。なぜなら、営業担当者は顧客と直接接しており、企業やサービスの価値を伝えるまさにその企業の「顔」と言える存在だからです。
「Why」を理解していない営業担当者が顧客と接しても、真の価値や信頼を伝えることはできません。営業担当者が、自分たちの存在意義や、なぜこの事業を行うのかを理解し、それをしっかりと顧客に伝えることが重要です。「あなたやあなたの会社がこの事業を手がける意味は何ですか?」という本質的な質問に対して、明確に答えられることは、事業をスケールさせる上で非常に重要です。
コーポレートミッションに関して、ネットショップ作成サービスのBASE株式会社が掲げる「Payment to the People, Power to the People.」は、自社の事業がどのような価値を提供するかをわかりやすく明示している良い事例です。
Who(誰にアプローチするのか)
営業戦略の次のステップは「Who」、つまり誰にアプローチするかです。ターゲット顧客を正確に選定することが、営業の成功に大きな影響を与えます。ここでは、ターゲット企業の業界、企業規模、役職、そしてその企業が抱える課題を深く理解することが重要です。
営業リソースを投入する前に、顧客候補にインタビューを行うことをお勧めします。これにより、ターゲットのペルソナがより具体的になり、解決すべき課題も明確になります。「大企業で製造業、社員数100人以上の広報担当者」といった漠然としたペルソナよりも、「建設機械向け部品メーカー、国内外に30拠点を持つ、社員数3,000名、提案したい部署はグローバル広報部、人数は5名、対面するのは部長、最終決裁者は執行役員の〇〇さん」という具体的な情報があれば、準備すべき資料や提案の内容が大きく変わります。
特にB to B向けの法人営業では、決裁者が誰であるかを見極めることが非常に重要です。上場企業、中小企業、スタートアップなど、企業の規模によって営業アプローチも異なります。また、担当者と話す内容と、役員層に向けた内容も異なるため、それぞれに合わせた営業資料や提案を用意することで、より効果的なアプローチが可能となります。
What(何を提供するのか)
「What」は、具体的に顧客に何を提供するのか、つまり、自社の製品やサービスがどのような価値を顧客に提供できるかを定義するステップです。ここで重要なのは、製品の機能を単に説明するだけでなく、その機能が顧客の課題をどのように解決し、課題解決後にどのような変化や価値をもたらすかを具体的に示すことです。
例えば、「このツールはデータ処理が速い」という説明に留まらず、「このツールを導入することで、貴社のマーケティング部門の業務時間を30%削減し、年間で〇〇円のコスト削減が期待できます」といった具体的なメリットを提示することが求められます。また、競合他社との差別化や、自社だけが提供できる独自の価値を強調することで、商談の成約率を高めることができます。
特にB to B向けの法人営業では、購買決定が稟議承認を通じて行われるため、具体的な価値が明示されていないと「事前承認では通ったが、役員から最終承認が下りなかった」といったケースに繋がりかねません。したがって、提供する価値を的確に伝えることが成功の鍵となります。
How(どのように提供するのか)
「How」は、どのように営業を行うか、つまり、どのような手段や方法を用いて顧客にアプローチし、商談を進めるかを考えるフェーズです。日本では、長らく足を使った営業スタイルが主流でしたが、コロナ禍を経て営業のデジタル化が急速に進みました。
自社の商材はオフラインで提供すべきか、オンラインで提供すべきか、それに対応する社内体制は整っているか、もしリソースが不足している場合はどのように補うのか。IT投資やAIの活用、または外部委託などの選択肢を検討する必要があります。
近年では、オンライン営業やインサイドセールス、マーケティングオートメーション(MA)ツールの活用が進んでいます。たとえば、ホワイトペーパーやウェビナーを活用して顧客の興味を引き、顧客データを取得。インサイドセールスが適切なタイミングでフィールドセールスに引き継ぎ、クロージングを行うプロセスが一般的です。また、CRMやSFAツールを活用して営業プロセス全体を管理し、KPIの追跡や進捗管理を行うことで、営業の効果を最大化できます。
さらに、顧客データの分析により、最適なタイミングでアプローチすることで成約率の向上を図ることが可能です。営業手法の選択は、ターゲット顧客の特性や業界のトレンドに合わせて柔軟に対応することが求められています。
Where(どこでアプローチするのか)
「Where」は、営業活動をどこで行うか、顧客との接点をどこに設けるかを決定するフェーズです。従来の対面営業はもちろん、現在ではオンラインでの商談やコミュニケーションが主流になりつつあります。
オンライン営業は、メール、ビデオ会議、SNSなどさまざまなプラットフォームで行われます。特にB to B向けの法人営業では、ウェビナーや業界特化型のフォーラムなど、顧客との関係を構築しやすい場として非常に有効です。
一方で、直接対面での営業が重要な業界も依然として存在します。展示会や業界イベント、訪問営業など、顧客の特性に合わせて、オンラインとオフラインの営業活動を適切に使い分けることが、成果を上げるポイントです。
When(いつアプローチするのか)
最後に「When」、つまり営業活動のタイミングです。適切なタイミングでのアプローチは、成約率に大きく影響します。たとえば、比較的予算の消化がしやすいタイミングである、年度末や予算締めの時期に合わせてアプローチすることも重要です。また、予算策定や執行スケジュールを確認しておくことも営業活動において必須です。さらに、顧客の行動データを活用し、効果的な曜日や時間帯にアプローチすることも成功の鍵です。
例えば、HubSpotの調査では、火曜・水曜・木曜がアポイントが取りやすい日とされており、月曜日や金曜日は成功率が低いとされています。最適な時間帯は午前10時~11時と午後4時~5時です。これは、週の始めや終わりよりも、決裁者が余裕を持って話を聞ける時間帯にあたるからです。
参照元:「The Best Time to Cold Call in 2024」https://blog.hubspot.com/sales/best-time-to-make-a-sales-call
参照元:「50 Cold Calling Statistics to Learn From in 2024」UpLead Cold Calling Statistics
営業戦略では、適切なタイミングを意識することで、顧客との接点を最大化し、商談の成立率を高めることが可能です。
終わりに
このように、5W1Hを基に営業戦略を整理することで、自社の商品・サービスの魅力が正しく伝えられるようになります。また、事業立ち上げの際のボトルネックも事前に予測がつく状態になるので、5W1Hを一覧で書き出してみることをお勧めします。また、日にちが経てば、顧客の反応や、同業他社との優位性などもわかるので、その内容を反映させ、サービスをより磨いていきましょう!